断熱等級5(Ua値=0.6)の断熱性能について

冷静に考えるとUa値=0.6は断熱性能が低いと思う。

Ua値=1.57から0.6へ断熱性能を上げると下の様になる。

 

Ua値=1.57

→断熱材の性能を上げて、窓をアルミ樹脂ペアへ変更

Ua値=0.87となる

→樹脂窓へ変更

Ua値=0.6へ至る

結果、概ね開口部の強化のみで終わり。

外皮表面積の影響は未考慮だが概ねこんな感じだ。

昔はトレードオフや型式認定等の酷いルールが有った。

今はマトモになった感があるがソレでも一部を除いて昔のままだ。

 

6地域限定となるが、主観的に断熱性能Ua値=0.87からUa値=0.6が一般的になるのに13年程度掛かった。

樹脂窓への理解で13年…

(その間iPhone は4から14へ進化)

 

13年位前に慶應大学近畿大学の教授が温熱環境と健康への影響を公表。東京大学の准教授が色々と担がれ始める。室温による死亡事故が交通事故件数を超える事が発覚。ニュースになり各地でセミナーが開かれる。

Heat20(断熱メーカーと有識者のグループ)によるG1、G2、G3の発表。

断熱性能と室温の関係が認知される。今の基準で断熱等級5、6、7に相当。

G1:室内10℃を下まわらない性能(現:断熱等級5)

(15℃未満になる割合15%)

G2:室温13℃を下まわらない性能(現:断熱等級6)

(15℃未満になる割合10%)
※6地域の為、部分間歇暖房。

 

YouTube等で得意気に仕様基準を語っている方々は概ねHeat20が元ネタ。

それ以外存在しない。

ぶっちゃけ10年程前にHeat20設計ガイドブックが出版された時にG1とG2にする為に必要な断熱仕様が本に書いてある。興味有れば読んで欲しい。

 

断熱性能と室温の関係が公表されて、窓を樹脂窓へ変えればG1(断熱等級5)になる。

得意げに室温を語る大人と共にUa値=0.6の注文住宅が大量発生。

そんな感じで一般化した感じだ。

 

直近の流れを見ると。

コロナ禍で巣篭もり需要と共にYouTubeの影響で高気密が認知度を増してきた。

高断熱?の割に冬場の家が寒い、「原因は気密性能」と言う感じだ。

 

ぶっちゃけ気密が改善されてもUa値=0.6は、室温10℃を下まわらない性能(15℃未満になる割合15%)だから暖かくなる訳が無い。

 

家が寒いのは暖房の使い方が悪い(部分間歇暖房)だから、全館連続暖房にしよう。

結果、電気代が爆上がりで家全体同じ温度にならない不具合が続出。

電気代や温度ムラを抑える為に熱交換換気や全館空調システムを導入検討。

一部で流行り始めている。

 

恐らく数年後にイニシャルコストが悪く電気代が抑えられない事に気がつくだろう。

そして、衛生面に問題があると理解する。

※カビだらけのエアコンを見ればわかると思うが、熱交換換気や全館空調システムも簡単に同じ状況になる。

 

室温を安定させる為に熱交換換気や全館空調システムを導入等の設備に走る事は悪手だ。

 

冷暖房機器はヒートポンプを使用したエアコンが最適解。これ以上、コスパの良いモノは存在しない。全館空調システムもエアコンに送風ファンをつけてたモノだ。壁掛けエアコンと変わらないが送風機能を付けただけで無駄に高価だ。エアコン1台25万。全館空調システム1件で200万。高性能壁掛けエアコンを各居室につけた方が良い。

 

必要になる冷暖房出力は断熱性能(Ua値)で決まる。設備を変えても(エアコンに送風ファンをつけても)必要になる出力は変わらない。そして、電気代は変わらない。

熱交換換気は、効果が限定的過ぎて有っても無くても変わらない。

無いとダメと言う人は、本質を理解していないか誤魔化している。

 

結局、断熱材の性能を上げない限り温度ムラも無くならず電気代は下がらない。

 

冷静にUa値=0.6を考えると13年前の大した努力も無く窓を変えるだけでG1と言うそれっぽい名前と何となくな性能を得られるから拡散されたモノなのかもしれない。

当初、Heat20のシナリオでは『コスパの良い量産型』と言っていたが狙い通りの結果だ。

当時、G2(現在の断熱等級6)はコストが上がるから無理だと多くの設計士が言っていた。

 

壁や天井の断熱性能を上げる事に躊躇するのは、繊維系断熱材を使用していない結果なのかもしれない。

例えば、高性能GW16kを高性能GW36kなど密度を変えれば施工内容を変えずに簡単に性能を変えられる。天井断熱なら野縁の上に載せる量を増やせば良いだけ。熱交換換気や全館空調システムの方が高価だ。

 

現場発泡ウレタンの場合はモノが変わる。屋根と壁で種類を分けたら工事は面倒でコストアップするのは誰が考えても理解出来る。

パネル断熱は工場の投資がどれだけ進んでいるのかによって対応の幅が変わる。

 

と言う事で、Ua値=0.6の家は壁の断熱性能が10年前から変化していない事が理解出来ただろう。

設備に頼っても金の無駄、本当に必要なのは断熱材のアップグレードです。

予算の関係も有るが可能で有れば、断熱等級6の家を建てる事をオススメします。

工事面積を減らしても断熱等級6にする方が良いかもしれません。

 

とりあえず以上。