絶対湿度を過度に重視する必要はない。
最近、一部で「絶対湿度」を過度に強調する方がいるが、筆者は一般住宅の湿度管理において、絶対湿度をそこまで重要視する必要はないと考えている。
理由は大きく2つある。
理由1 絶対湿度だけでは結露を判断できず、一般の方には分かりにくい。
絶対湿度を湿度管理の目安にしたとしても、それだけで結露を防げるわけではない。
結露を決めるのは、空気中に含まれる水蒸気量だけではなく、その空気が接する表面温度である。
例えば、同じ室温・同じ湿度の部屋であっても、窓や壁の表面温度が低ければ結露する。一方、表面温度が十分に高ければ結露しない。
つまり、絶対湿度を把握しただけでは「どこで結露するのか」までは判断できない。
また、湿度には相対湿度、絶対湿度、湿度比など複数の指標があり、絶対湿度についても重量基準・体積基準などの考え方がある。空調設計や熱負荷計算では重要な指標だが、一般の方が日常の湿度管理に利用するには少々複雑である。
それならば、一般家庭では「室温20~22℃、相対湿度40~50%程度」といった、直感的に理解しやすい指標で管理した方が実用的ではないだろうか。
もちろん、絶対湿度が不要という意味ではない。
空調設計や熱・水分収支を考える上では非常に重要だが、生活者が日常的に湿度を管理するための指標として、絶対湿度だけを特別視する必要はないということである。
理由2 潜熱を意識し過ぎても、住宅の体感環境が劇的に変わるわけではない。
湿度が体感に影響すること自体は否定しない。
特に夏場は、湿度が高くなると汗が蒸発しにくくなり、蒸し暑く感じるため、潜熱の影響は無視できない。しかし、住宅の快適性を考えた場合、湿度だけを追いかけるよりも、室温と表面温度、つまり放射環境に注目した方が重要な場面も多い。
例えば、室温が22℃であっても、窓の表面温度が12℃しかなければ、窓からの放射によって寒く感じる。
反対に、室温が20℃でも、窓や壁の表面温度が十分に高ければ、想像以上に快適に感じることがある。つまり、住宅の快適性は「空気の温度」だけでも「湿度」だけでも決まらない。室温、湿度、表面温度、気流などを総合的に考える必要がある。
また、超音波式加湿器から出る霧を考えてみても面白い。
仮に熱湯を入れたとしても、噴霧された微細な水滴は非常に大きな表面積を持つため、周囲の空気との熱交換が速く、さらに蒸発する際には周囲から蒸発潜熱を奪う。そのため、噴霧された霧は熱湯そのものほど熱く感じない。
これは、水を加えたからといって、その熱エネルギーがそのまま室温上昇につながるわけではないことを示す一例でもある。
さらに住宅では、24時間換気によって常に外気との入れ替えが行われている。
加湿によって室内に水蒸気を供給しても、その一部は換気によって外へ排出される。したがって、加湿量だけを見て「これだけの水分を空気に与えたから、これだけ室内環境が変化する」と単純に考えることはできない。
まとめ
絶対湿度は、空調設計や熱・水分収支を考える上では重要な指標である。
しかし、一般住宅の生活環境を考える場合、絶対湿度だけを過度に強調する必要はない。結露を防ぐのであれば、空気中の水蒸気量だけでなく、実際の表面温度を見る必要がある。快適性を考えるのであれば、湿度だけでなく、室温・表面温度・放射環境・気流を総合的に見る必要がある。
結局のところ、住宅の湿度管理に必要なのは、特定の指標を絶対視することではなく、「何を目的として、その指標を見るのか」を理解することではないだろうか。
以上