夏は湿度が高いから調湿か除湿する事が重要。
この言葉だけを聞くとイメージしやすい為に簡単に納得してしまう。
調湿建材や可変透湿気密シートが重要と言う人がいても、夏は防湿気密シートが重要とは誰も言わない。
一昔前に自然素材に重点を置いて設計していた人がよく言っていた。
調湿するからカビない。
自然素材は呼吸するから湿度が低い。
実際は珪藻土などの調湿効果には限界が有る。
限度を超えればカビも生える。
なぜ、自然素材が好きな方は調湿や呼吸と言ったワードに引かれるのか本当に不思議。
夏の空気は高温で湿度が高く結露しやすい環境だ。
室内はエアコンを使用して冷房する為、外気より室内の方が湿度が下がる。
湿度は、水蒸気分圧(圧力差)の関係で高い所から低い所へ移動して均一になろうと働く。
調湿を優先させた設計では、理論的に外部から水蒸気が雪崩れ込んでくる。
本来、水蒸気の影響(潜熱)を強く受けるはずが、調湿建材を使えば室内の水蒸気が外へ抜けると言うから驚きだ。物理的にありえない。
夏型結露を使い恐怖営業を行う人も同様だ。
夏場は外から室内に水蒸気(潜熱)が流れてくる事はあっても室内から外に流れる事は無い。
※防湿層を起点として室内と外気と分ける。
可変透湿気密シートも同様で、断熱材内部の湿度が高まると孔が開き室内側へ湿度を逃す。
夏場は湿度80%は普通。可変透湿気密シートの孔は常時開いた状態になり断熱材が全熱交換となり理論的に湿度の影響(潜熱)が高まる。
可変透湿気密シートを使った夏型結露対策は、エアコンに負荷を与えるだけになるはず。
この理論がセルロース断熱にも該当すると思う。
この疑問について2008年頃から色々な方が言及していた。ある有名な先生が、「当時、製造メーカーに問い合わせた際に日本の木造住宅では 耐力面材に透湿抵抗が高い合板などを使用しないと室内が湿度過多になるだけ。」と回答を貰った有名な逸話もある。
当時も非定常結露計算は存在していた。
非定常で計算すれば夏に結露リスクが高る事が問題視され、可変透湿気密シートの優位性を強調して営業していた人がいた。
結果的に結露が発生しても暑いから乾くと言った所で決着がついたと記憶している。
当時から15年経過した今頃、高気密・高断熱を勉強している人がこの理論に気が付かないのか疑問だ。当時に比べて断熱等級も底上げされて色々な大学の先生も参加しているはずなのにアホな事になっている気がする。
筆者は、透湿性能を持たない外張り断熱を使用する場合を除き防湿気密シートを使用する事に絶対の優位性があると思う。
外張り断熱をする場合は、内部が露点温度にならない為、防湿気密シートは有っても無くても良い。
夏の場合は、外から湿度の流入を抑えてエアコンの負担を減らしてくれる。
冬の場合は、室内からの湿気の放出を抑えて加湿の補助と壁内結露を抑制してくれる。
小屋裏エアコン等の限定された空間を冷やす場合やエアコンの冷風が断熱材の入った壁に直接当たる場合は夏型結露が発生する。
設備設計をしっかり勉強すれば怖いものはない。
そして、通気層の流れと棟・軒換気が重要だ。
通気層に十分な流れが生まれると水蒸気圧は壁内(断熱材内部)に比べ低い状態になる。
結果、通気層が壁内(断熱材内部)で高まった水蒸気圧の逃げる先になる。
湿気は室内では無く通気層(外気側)へ逃げる仕組みが成立する。
この仕組みに室内側へ湿気を逃してしまう事はノイズでしかない。
筆者は、盲目に信じている訳でなく結露させない仕組みを効率的に機能させる為に防湿気密シートが必要だと思う。
今は何をしてもコストが高い。
無駄な事はせずに基本に忠実が重要だ。