現場発泡ウレタンのスキン層と透湿性能について

(株)日本アクアさんがYouTubeで松尾氏と現場発泡ウレタンのスキン層の有無について語った動画を出した。内容はスキン層の有無に関係無く透湿すると言ったものだ。

以前から分かっていた事だが、スキン層がある事で透湿抵抗が有り防露性能が生まれる(壁内結露を抑制する)と言う勘違いが多かった。

スキン層が有るから大丈夫と公の場で言い切ってしまう人も少なくなかった。

 

完全にリテラシーの問題だ。

 

寒冷地で建築する場合、フラット35適合証明を受けると現場発泡ウレタン(100倍)の壁に防湿気密シートを施工する様に指示を受ける。住宅支援機構の技術部にとって、スキン層の有無は防露性能に影響を与える要素では無いと言う事だろう。

ココに疑問を抱くのだが、評価や検査を行う人々と現場で設計・施工する人々(一部)の見解が異なる事だ。

恐らく、こう言った点が業界全体の信頼を失う結果につながるのだろう。そして、ご施主様の不信感やYouTuberが〇〇の家・〇〇基準等を売り込む結果につながる。本当に情け無い。

※非定常結露計算や定常結露計算を用いて壁内結露のリスクが無いと証明すれば必ずしも防湿気密シートを施工する必要はない。ただし、性能表示評価協会が指定する室内・外気の設定条件は意外と厳しい訳ではない。私ならどこの地域でも施工する事をオススメする。

この動画の公表はとても良い事だと思う。防露性能を考え結露対策の必要性を問う技術者が圧倒的に正しかった事が証明された。

コストアップを承知の上で、大切な家が結露で傷まない様にと現場発泡ウレタンへ防湿気密シートを施工していた人や室内換気を強化していた人が報われるキッカケに繋がれば良いと思う。

願わくば、(株)日本アクアさんには、現場発泡ウレタンの透湿防水シートへの直吹きについて「透湿防水シート協会がNGを出していた理由について」を動画として出してほしい。

※動画が出たら笑ってしまう。

業界の者なら意味はわかるだろう。

 

透湿防水シートへウレタン直吹きがNGな理由は下記の通りだ。

1.透湿防水シートが膨れて通気層を潰す。

2.ウレタンが毛細管現象で雨水を吸い上げる。

3.ウレタンの発泡熱が透湿防水シートへ影響を与える。

4.透湿防水シートの重ね代からウレタンが出る。

5.ウレタンを剥がして性能を評価出来ない。

※ウレタン原液がシートの目に詰まって透湿しなくなると言う人もいるが、ソコは疑問を感じる。

1〜5の理由があっても法的な規制が有る訳ではない。透湿防水シート協会がNGを出しているだけに過ぎない為、2023年現在でも透湿防水シートへウレタンを直吹きするビルダーは存在する。

実際に雨の日に現場を見るとドン引きする。しっかり吸水して雨の跡がハッキリ残る。タッカー孔からも吸水する。ココは非定常結露計算(ウーフィー様)が評価出来ない部分であり、乾くから大丈夫と言ってはいけない所だろう。そして、室内側へ可変透湿気密シートを施工して有っても乾く訳が無い。

 

コレはあまり問題になっていないが木材の腐朽や壁内結露(夏型と冬型含め)の原因になりかねない。

中古住宅で流通した場合、リノベーションを行う時に壁を剥がさないと確認が出来ない上、問題解決には外壁を剥がす必要が出てくる。コレだけで百万円以上は飛ぶ。耐力面材の再施工等となったら数百万だろう。完全なハズレ物件だ。

私なら割り切って既存の窓を樹脂窓への交換も提案に盛り込んでしてしまうかも(笑)

※現在流通している中古住宅でも、現場発泡ウレタンには注意が必要だ。2012年に透湿防水シート協会はNGを出した。現在、新築住宅でも直吹きを見かける為、築10年はグレーゾーンだ。購入時は、確認申請時の資料に耐力面材の記載がある事を確認しましょう。

 

民法で施主や中古住宅購入者は、強力に守られているが施工業者や仲介業者が存在して初めて成立する。何も無い所に責任は問えない。ある意味死人に口無し。持たざる者こそ最強説の爆誕だ。

 

瑕疵担保責任保険に屋根•壁の雨漏りは適応するが結露は自然現象の為、保証対象外となる。壁からの浸透は漏水になるのだろうか?

 

悲しい事に現場発泡ウレタンが最高と言う技術者はとても多いが、ウレタンメーカーの意向を無視して採用している者も非常に多い。

困ったモノだ。

 

国は住宅の耐用年数に対する壁内構造と評価基準を作り法的に規制すべきだ。35年で価値が0円になる基準で建築を許可しているからアホな事が発生する。

 

結論

現場発泡ウレタンを使用する時は耐力面材を使用しましょう。定常結露計算等で壁内結露のリスクが無くても予算が有るなら防湿気密シートを施工した方が良い。屋根断熱で気密シートが施工出来ないと言うなら野縁を組んで下端に気密シートを施工すれば良い。

予算が合わなければ、あきらめるしかない。

それこそ設計・施工側の提案力だろう。

防湿が無理なら24h換気をしっかりすれば良い。

 

得意げに語る大手ハウスメーカーの営業マンは存在するだろうが実際はモノを知らない。過去の自分が無知な営業マンだったのと同じ。そして、現職の知人も当時の自分と同レベルだ。購買担当と設計担当がわかれば良いと言うだろう。

 

今回、(株)日本アクアと言う社名を出したが否定する内容ではありません。勘違いの無い様に。

 

今日は、良い天気だけどやる事が無いのでスキン層からウレタン直吹き・断熱改修まで語ってみた。割と清らかな心で、紫色のドロドロとしたモノを吐き出し続けている。

 

今回は以上です。