断熱等級567どこに向かうべきか

断熱性能の底上げが行われる理由は、地球温暖化対策が根底にある。我々人類は、地球温暖化に歯止めを掛けないと色々な不具合により生活する事が困難になる為だ。

だが、建築現場ではインフレで値段が上がっている状況で断熱性能を上げる事は実際に厳しいのでは?と言われるケースが多々ある。

実際に高額商品は売れなくなる為、断熱性能を上げた高性能住宅は仕様を考えるだけ無駄だと言う工務店も多く存在する。中には、住宅価格が上がると投資として採算合わないのでは?と考える輩もいる。

しかし、考えて欲しい。値段が上がったから今までの仕様(断熱等級5)で良いのか?

恐らく、答えはNOだ。

国(世界)は、住宅部門において2030年までに2013年CO2排出量より50%減らす目標があり、2050年までにカーボンニュートラルを達成する計画だ。

ソレに伴い、高性能住宅にする事を条件として補助金や住宅ローン減税や住宅ローンの優遇金利等の政策を行い打ち出している。

 

例えば

子供住まい給付金(既に終了済み)は100万円。

住宅ローン減税は住宅ローン残高0.7%を還付。

住宅ローンの優遇金利は初回10年金利0.5%低く設定出来る。

コレら全て断熱等級5(省エネ基準適合住宅)を最低限として、認定低炭素住宅やネットゼロエネ住宅等の高性能住宅へ間口が広がる内容となっている。

 

そして、日本はエネルギー自給率が非常に低い。

※2022年のエネルギー国内自給率は約11%。

 

産油国でもなく原子力発電を稼働させられない状況下で化石燃料を大量購入し火力発電に依存している。結果、年々エネルギー代が高騰。

現状は、高騰する電気代やガソリン価格に税金を投入して誤魔化して生活を維持しているに過ぎない。こんな状況は、永遠に続けられる訳がなく当然サスティナビリティ(持続可能性)が必要となる。今の日本は地球環境だけでなく経済にもサスティナビリティが求められている状況だ。

直近では、イスラエルの紛争により更なる原油価格の変動リスクが発生している。原油が上がれば、資材価格も高騰する。本当に考えたくない。

 

温暖地域(6地域)を基準に仕様を検討すると断熱等級6がベストだと考える人が多い。

理由は、外張り断熱で付加断熱をしなくて済むからだ。7~8年前に一度試算したが、原価で5万円/坪程度掛かっていた。現在は、8万円/坪位は掛かるだろう。職人の手間賃等含めたら結構コストアップになる。だから、断熱等級6前後を推奨しているのだろうと推測している。

世間では、『断熱等級6+』や断熱等級5で『丁度良い仕様』『丁度良い塩梅』等の言葉を聞く機会が増えた。

ただ、数年前のHeat20が周知される様になったタイミングを振り返るとG1やG2の選択で皆さんG1を選んでいた。今の断熱等級5相当だ。窓を樹脂窓へ切り替えれば簡単に達成出来るからだ。

2015年設計ガイドブックが初刊されてから約8年でG1は市場の最低ランクへと塗り替えられた。

ただ、化けの皮が剥がれただけかもしれない。

 

G3(断熱等級7相当)が発表されたのが2019年頃、結果3年間で一般的に認知されるようになった。

 

初心に返って性能を見直すと下記の通りだ。

断熱等級5 G1:概ね10℃を保持

断熱等級6 G2:概ね13℃を保持

断熱等級7 G3:概ね15℃を保持

※冷暖房の手法を除いている為、適切な設計を施せば22〜23℃になるので誤解の無いように。

 

『性能だけを考えれば、10℃・13℃は寒い。』

『正直、概ね15℃も微妙だが全館連続暖房を主体に考えれば問題は無い。』と言った所だ。

 

技術者として正直に述べると断熱等級7相当で全館連続暖房と言うモノが成立し始める。

具体的には、『LDKに設置したエアコン1台で家全体を温める事が出来る。ただし、窓を程度の悪い物を選んだ場合や気密性能が悪い場合は、温度ムラが発生する。』となる。

結果、金銭面を考えなければ断熱等級7相当が良い事になる。

ただ、断熱等級7相当だと全ての人が手に入れられる物では無く、2025年の壁量計算基準が追い打ちを掛ける事となる。

一次取得者を基準に考えれば、将来的に建替えは厳しいのでリフォームを意識した仕様が必須となる。おそらくココに最適解があると筆者は読んでいる。とりあえず今回はココまで。

 

以上